施設名 源氏物語ミュージアム 所在地 宇治市宇治東内45-26 竣工 1998年 設計 (株)日建設計 施工 住友建設・大春工業共同企業体 規模 地上1階、地下1階 構造 RC造 敷地面積 6,255u 建築床面積 2,9399.94u 展示面積 888u 展示構想、展示設計 (株)トータルメディア開発研究所

「さわらびの道」から少し逸れると、源氏物語ミュージアムの標識が見えたが建物は見えない。木立に覆われた小道が建物へ続く。道の両脇の低木は「ムラサキシキブ」。

長い小道が途切れるころ、水の中に石が井桁に組まれている。「筒井筒」か?
この反対側が建物の入り口だ。

エントランスは車寄せのように飛び出していて、全ての面がガラス。屋根にはカーブがあり、御殿風の印象だ。


アプローチは蓮の池に掛けられた柔らかいカーブを伴った橋になっている。「夢の浮橋」を現しているのだろうか。
内部は蔀を跳ね上げて、天井高を低く感じさせている。

壁はガラスで外の景色と一体感があるが、上部は垂れ壁になっており、どことなく寺院などの廊下からの景色のように感じられる。視線が横へ広がる。左上の写真の左部分は砂利で敷き詰められた坪庭になっており、ベンチがある。植えられた木の種類はわからないが、桐かなあとつい思ってしまう。「桐壺」か?
右上の写真の跳ね上げられた蔀の左側が角になっている。この建物のガラス壁の角には柱が無い。外の緑が飛び込んで来るように感じられる。
この美術館は展示がある有料の棟とショップや喫茶、図書室や講義室のある無料の棟に分かれている。展示収蔵と飲食が別棟になっているのは収蔵物の保全に関して大きなメリットになる。

上の写真は無料スペースの、左上は喫茶コーナーとパソコンコーナーの外側に面する壁の開口。開口部の高さは膝程度。パソコン画面に外光の映り込みを防ぐということもあるが、あふれる外の緑の切り取り方が和風の印象。視線が下がり手元に来る、集中し落ち着けるスペースになっている。
右上の写真は図書室のブラウジングスペースの開口。椅子に腰掛けたときの視界が、丁度座敷に座ったときのように感じられる。上部の壁が下がっていることで、外の景色と一体というよりも、意識は室内に向く。疲れた眼を緑が癒してくれる。

左は喫茶スペースで、大きな開口から坪庭に出られる。右は図書室とその前室。

左は無料スペースで、ショップ、喫茶、パソコンのコーナーがあるスペース。夫々のスペースは、胸の高さ程度の衝立で仕切られている。図書室の前室もこのスペースに面している。引き戸は坪庭に出る部分にしか無いというオープンなスペースだ。寝殿造りを意識しているのかと思った。
上部は天井をはらずに屋根の部材とカーブをそのまま見せている。折板のアーチを壁に埋め込まれた柱でで支えている。
右はエントランス部分。池の中に突き出た立方体の3面がすべてガラスで角に柱もない。この屋根は池の中の頑丈な柱で支えられている。柱と屋根がまずあって、その内側に床と壁をスゥーっと差し込んだような作りになっているのでガラスの壁は天井の重さとは無縁だ。
変な屋根
最初の印象は「変な屋根」だった。桃山時代の御殿風な感じがした。
この建物は当然ながら、源氏物語、平安時代をイメージに取り込んでいる。長いアプローチの植栽「ムラサキシキブ」や「蓮」、「筒井筒」、「夢の浮橋」、坪庭は源氏物語に由来しているのだろう。釣殿のようなエントランスや縦方向の視線を遮るためと意匠としての跳ね上げられた蔀、一棟を衝立だけで仕切る内部空間や、棟と棟が回廊でつながれているのはさしずめ現代の寝殿造りだ。
この場所は幹線道路を一本奥に入ったところにある。背後には山が控え、周囲も人工物よりも自然の木立の割合の方が高い。ここの主役は周囲の緑で、建物はその緑の切り取り方に工夫の主眼が置かれているように思う。エントランス部分と棟と棟を繋ぐ回廊部分の開放感と、パソコンコーナーの緑の切り取り方、図書室に取り込まれる緑の量。借景だ。視線が常に横に広がるような工夫が、コンクリートとガラスの建物に和風建築のような居心地を作り出している。
緑を取り込みたいところは隅の柱も無くして、視線を遮るものは水平方向に置いている。これを可能にするのが、支えが少なくできるあの屋根の形だ。まっとうな理屈で組み立てられていて、納得するが、それでもやっぱり変な屋根だ。変であるからこそ、建物の特徴になっている。
源氏物語ミュージアム

「鳳翔館の・・・」について
感じたままを言えば、それが一つ一つの展示物をお参りするという感じにさせているように私には思えます。
「源氏物語ミュージアムへ・・・」について
あまり変わっていないのではないでしょうか。
ああゆう、展示計画の専門の業者が展示内容をほとんどプロデュースしたかに感じられる「公営?」の博物館は、総じて企画展示に弱く、リピーターを楽しませてくれないように思います。
滋賀県の琵琶湖博物館は、設立準備からかなりの時間が割かれ、今もちゃんとした学芸員さんの集団が維持しているせいか、何度行っても楽しい稀有な公共の博物館です。
小規模の博物館では、余程有能でオタクな学芸員がいない限り、中々継続的な活動は困難なのかな、と思っています。