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京都市LRT交通社会実験


京都市LRT交通社会実験

京都市は、2007年1月24日今出川通りの叡電出町柳駅―嵐電北野白梅町駅間の約4キロの区間で、LRTの社会実験を実施した。午前10時から午後1時までの3時間、LRTに見立てた市民モニターを乗せた市バスを西行きと東行きの計25本をほぼ10分間隔で走行させた。その間、LRTの走行車線確保のため、通りの大部分は片側1車線に制限された。

出町あたりの商店街はLRTの誘致に熱心なところだ。実験終了後のインタビューで、絶対反対というのはタクシーの運転手、道沿いには「LRT断固反対」の垂れ幕があり、渋滞を目の当たりにした市民のなかには、LRT実施に危惧を抱く人、この道路幅では難しいのではないかという感想を言う人もあった。
市民モニターのアンケート集計は3月のLRT検討協議会で報告される。

渋滞は荷さばきの配達車両の停車、市バスの乗客の乗降のための停車などで発生し、河原町通から烏丸通にかけての西行きは、車が長時間動かないこともあった。想定内の結果ということだろうか。しかし実験をあらかじめ告知して、多くの車が迂回した状態での結果だ。荷捌き停車に関して京都市は、三条通の社会実験を通じて、荷捌き停車場所の指定と時間調整により成果を出している。

望まれるパーク・アンド・ライドとの連携

京都市では平成13年から嵐山で、平成16年からは嵐山と東山でパーク・アンド・ライドの社会実験が行われている。春と秋の観光ピークの数日間交通規制をすることにより、観光地へ流入する交通量を減らそうというもの。単なる交通規制と違うところは、観光地へ通じる道筋に専用の低額駐車場を設けたり、駐車場利用者が公共交通利用する場合の運賃割引や、駐車場から観光地までのシャトルバスを運行し、車を使わない環境をつくり、交通規制と連動させていることだ。

専用駐車場の利用率は実験の認知度に比例して年々増えてはいるが、交通規制区域周辺は相変わらずの渋滞が起こっている。原因は専用駐車場の位置にある。交通規制区域のすぐ外側に大規模で低料金の駐車場が不可欠であるにもかかわらず、規制区域からは相当離れているうえ、住人にさえ認知度の低い駅の周辺にある。

パーク・アンド・ライドの駐車場に求められる条件は、各方面に通じる路線の乗換え駅の近くであること、その周辺にショッピングアーケードや、飲食、情報取得ができる施設やアメニティ施設も必要だ。現在京都市のパーク・アンド・ライド専用駐車場はその条件を満たしていない。

渋滞の原因はもうひとつある。専用駐車場から観光地までの便の悪さだ。期間限定のシャトルバスではいまひとつというところ。専用駐車場からシームレスに観光地まで運ぶ軌道が必要になる。

パーク・アンド・ライド実験報告は公開されているが、平成18年からは「社会実験」の文字がなくなり、「観光地等交通対策」となっている。将来の指針が不明だ。実験がそのまま観光交通対策として嵐山と東山など局所的に継続されるのか、あるいは京都市の市街地全域を交通規制の対象とし、周囲に大規模な駐車場をつくり、LRTとの連動を念頭に置いているのかが見えてこない。

LRTもパーク・アンド・ライドも局所的な施策では却って混乱を招くだけだ。パーク・アンド・ライドは、市街地全域を規制対象とし、既存路線を中心にするなら京都駅、山科、伏見、桂、北大路駅の周辺か、現在の車の流れを中心にするなら、名神東インター、南インター、老坂、に乗換え用駐車場を整備できればいいと思う。LRTは上記の駐車場の内側を、車よりも安く便利になるよう敷設できれば言うことなし。

今回のLRT社会実験も、TDMとの連動に触れているし、パーク・アンド・ライドはTDM政策の一部だ。パーク・アンド・ライド駐車場のひとつに大津インター周辺を指定しているので、将来の連動に期待はしている。しかし現在はまだTDM政策の「観光地等交通対策」、つまり観光地嵐山と清水寺周辺の交通渋滞緩和でしかない。

LRTも、パーク・アンド・ライドも観光という側面から語られがちだが、それのみが突出すれば住民からの反発は免れないうえ、住民の利便性が損なわれることが省みられない計画に発展することも懸念される。将来的にLRTとパーク・アンド・ライドを連携させることを考えるなら、まず住民にとってどう良いのかを十分に検討しアピールしなければならない。住民にとって安全、安心、便利なら、観光客にとって不便なはずは無い。

TDMとは

TDM(Transportation Demand Management)とは交通需要マネジメントと訳されるが、要は「交通をどう管理するか」というプランや政策や手法のこと。それを「道路交通混雑を緩和する手法」(国土交通省)のことと言切ってしまうのはあまりにも短絡にすぎる。

お役所が扱うのは車の台数や交通量などの数字だ。交通渋滞の緩和を主眼とするなら、対策は何もしなくていい。国の人口統計を見れば、今後20年以内に人口が大幅に減るのだから当然ドライバーの絶対数が減る。放っておけば交通渋滞は無くなる。それまでの間は、財源も無いことだから、交通規制したり取締りを強化して凌げばいい。そんなおバカな考え方をする役人や議員が出てこないとも限らない。

ふつうの人のふつうの暮らしをつぶさに見ていれば、何をすべきか解るはずだと思う。人が渋滞に巻き込まれようと、駐車場探しに困ろうと、維持費がかかろうと、自家用車に乗るのは便利で快適だからで、自家用車以上に便利で快適な輸送手段やサービスがあれば車好きでなければ、誰もわざわざお金がかかる自家用車を持とうとはしない。

日常の買い物に車を使わないようにするなら、市町村や生活圏内など小回りが効く地域内限定で、例えば1時間毎に車を地域内に循環させ、買いもの荷物や書類の配送をする会社なりシステムを市町村が運営してみてもいい。それを一人暮らし老人の訪問や医者の往診と連動してもいい。観光や通勤に車を使わないようにするなら、少なくてもLRTを既存の鉄道終着駅からシームレスに乗り換えできるようにし、住民用の定期チケットを低料金で発行しななければならない。市街地に車を乗り入れさせないなら、周辺地域の大きな乗換え駅近くに大規模で安価な駐車場を準備しなければならない。

LRTの導入には大いに期待しているが、周辺環境を整える以前に導入を急げば、京都市電廃止直前と同様の問題(市街地の交通渋滞と環境悪化)に突き当たることは確実だ。単に京都市街地の交通渋滞緩和や観光促進に留まらず、京都という町と車の関係を、住人の視点から真摯に問い直すことが必要だ。

京都市ではTDM施策を、「利用者に,時間・経路・交通手段などの交通行動の変更を促し,交通混雑の緩和を図る方法(例えば,ピーク時を避けた利用や,混雑ルートの回避,マイカーから公共交通利用への転換など)」と説明している。視線はあくまで道路と交通量にある。

ぜひTDM(交通)政策の視線の中心に「人」「住人」を据えてほしい。将来を見据えて自家用車を持たない老人が、買い物でも、お寺参りでも、友人を訪ねるにも、便利で安い交通機関や安全な歩道を、お題目だけでなく、真剣、誠実に整備してもらいたいと心から思う。

サイト内のLRT関連記事です。
京都LRT計画にモノ申す[2006/05/24]
京都の足 LRTはいつできる?[2005/04/05]
京都観光 新しいスタイル[2004/11/09]

参考にしたサイトです。
京都のLRT:交通社会実験(blog;ノルマ!!)
京都市基本計画(交通基盤づくり)
新しい公共交通システム(京都市)
新しい公共交通システム調査報告書(京都市)
「歩くまち・京都」交通まちづくりプラン(京都市 TDM施策総合計画)
三条通交通処理計画調査
嵐山・東山観光地交通対策実施概要、社会実験、調査報告書(京都市)//パーク・アンド・ライドのこと//
社会実験結果 歩行者と自転車系のリンゲージモデルの創出(国土交通省)
京都パブリックカーシステム実証実験の成果と課題
京都市交通政策室


posted by 八識 | Comment(4) | TrackBack(0) | 街角見聞録
この記事へのコメント
こんにちは、ご来訪有り難うございます。
ハイレベルで且つ音感もいいハンドルネームに先ず感心、そして(今頃!?)アドルフ・ロースを取り上げられる辺り、もう一度感服いたしました。
首題の件ですが、興味はあり、逃げる気はありませんが、住民皆さんのまっただ中へ飛び込んで議論する勇気もありません。
TBの件、スパム対策がしてありますので、こちらのURLをガードから外します。
今後とも宜しく、また遊びにおいで下さって、コメントなどお願いします。
Posted by sango at 2007年02月08日 09:49
sangoさま
ご配慮ありがとうございます。

知ってしまえば感じられないし、知らなければ解らない、さてどうしよう。
疑問や怒りを表に出さず、可も無く不可も無く育ち、大人になってしまいました。

ロースやデュシャンは強烈で、とても新鮮でした。
「なんでやねんっ!」と反感を持ちながらも、知識が増えるに従って、面白くなってきました。
ロースはミースには成れなかったと感じた時点から、少し好きになりました。

学習や思考することに慣れていないので、回り道ばかりです。
LRTも回り道を経れば、また違った見方ができるかもしれません。外野からですが。

またお邪魔します。どうぞよろしく。
Posted by 八識 at 2007年02月09日 07:04
>ロースはミースに成れなかった

恐ろしいことを仰る、

まともに受け留めるとよろめきますので、聞き流すことで逃げます。
Posted by sango at 2007年02月09日 09:04
ああ、逃げられてしまった。

恥ずかしながら何が恐ろしいことなのか解らず。
まだ回り道が足りないのかもしれません。
出直してきます。
Posted by 八 識 at 2007年02月09日 22:51
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